「共創 きょうそう」とは、近年、使われるようになったマーケティングキーワードです。まだ、新しいキーワードなので辞書やパソコンの文字変換をしても出てきません。
アメリカの経済学者 C・K・プラハラード氏(米ミシガン大学ロス経営大学院教授)が2004年に著書「価値共創の未来へ―顧客と企業のCo‐Creation / The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers」で提唱した概念です。ちなみに、このプラハラード氏は「コアコンピタンス」を提唱したことでも有名です。残念ながら5年前の今日、4月16日に亡くなりました。
「経営学の概念」というと、一般の人には縁遠いものと捉われてしまいますが、実は私たちの生活と密接な関係にあります。一人の学者が発表して多くの人たちが賛同、ヒットする概念が生まれると、それは国境を超え世界中に伝播していきます。まず、世界中のマーケッターが注目して、次に経営者が企業戦略に取り込んでいきます。コカコーラ、Apple、IBM、ネスレ、トヨタ・・・そういった世界的な企業がその概念をベースにした商品やサービス、宣伝を一斉に展開してくるわけです。
発表から少なくとも5年、ほとんどは10年以上の年月の中で研磨され、それぞれの企業でカスタマイズされ、世の中に広がっていきます。私たちは知らずうちに、生活に溶け込んだものを経験するわけです。
さて、話を「共創」に戻しましょう。
~企業は製品やサービスを売るだけでなく、顧客の声にも注意を向けなければならない、とはこれまでにも言われていたことだが、それもあくまで顧客の声を聞いてそれを生かすという企業主体の考え方。 本書ではさらに踏み込んで、これからの時代、顧客と一緒になって価値を生みださなければ企業は競争に生き残れないと説く。つまり「企業主体の価値創造」から「顧客中心の価値共創」の時代へという新しいパラダイムを提示する。~Amazonの解説より
「これが共創だ」という明確なカタチがあるものではなく、行動や方向性の姿勢や考え方です。カタチはそれぞれの企業の活動の結果に現れます。上記の解説で述べられているように、ユーザー参加型のコラボ商品開発がわかりやすい例です。しかし、ユーザーを集めて、グループインタビューをして、商品開発に活かすというレベルから「共創」はもっと踏み込んだものです。事業モデルそのものに企業と顧客(ブランドファン、パートナー企業、地域市民など幅広い人々)が一緒に価値を高めあっていく企業活動です。
例えば、ストックフォトでは共創が実践されています。ストックフォトとは、魅力的な写真素材を使いたい時に自前で撮影するのではなく、費用を払ってすでにある写真素材を購入できるサービスです。巷にあふれるたくさんの広告や、テレビ番組の参考画像で使われています。「Photo: Getty Images」のようなクレジットをご覧になっているのではないでしょうか。
ストックフォト自体の歴史は長くフィルムカメラの時代から存在します。当時は一部の専門カメラマンが撮影した写真素材が提供されていました。カメラがデジタル化してインターネットが普及するようになってから、たくさんのプロカメラマンが参加するようになって爆発的に素材点数が増えました。さらに、近年の機材の高性能化や販売支払いシステムの充実で、より多くのカメラマンが加わっています。ハイアマチュアと呼ばれる上級者や、プロシューマと呼ばれるアマチュアとプロの汽水域の人々です。
費用を払う限りは、品質はもちろん高いレベルのものが求められますが、固定概念に縛られない新鮮な表現が重要です。同じようなレベルのものであれば「まじめでキッチリした写真」よりも「目新しく魅力な写真」の方が注目されるのは当然です。
プロシューマーは販売することで利益を得ることができます。それを糧に生活をしていける人は少ないかもしれませんが、自分の写真作品が企業のWEBや広告に利用されるという承認欲求は充分に満たすものです。
ストックフォトの企業側は、よりレベルの高いたくさんの写真作品(素材)が集めるように、プロシューマーの支援をしています。無料で写真講習会をするような取り組みもされているようです。まさに、一緒に価値を高めあっていく企業活動です。
今後、様々な業種や分野で共創が取り組まれていきます。JOINでも事業モデルそのものに関与する共創プロジェクトを手掛けていきたいと考えています。